生命保険文化センターの調査によると、生命保険の加入率は全体で約80%となっています。
ほとんどの方が、何らかの保険に加入をされていることと思います。

その中で、比較的掛金の安い共済に加入しているという方も多いのではないでしょうか?

今回は似ているようで違う、生命保険と共済について比較し、メリット・デメリットについて解説します。

参考:公益財団法人生命保険文化センター|生命保険に加入している人はどれくらい?

生命保険と共済の違い

生命保険と共済では、大まかに下記のような違いがあります。

  生命保険 共済
根拠法令 保険業法 組合法など
監督官庁 金融庁 組合によってことなる
加入対象者 不特定多数 組合員
セーフティネット 生命保険契約者保護機構 なし
取扱機関 生命保険会社 各組合
主な用語 保険料 掛金
保険金 共済金
契約者 加入者
配当金 割戻金

根拠法令

生命保険は、保険業法によって規定されています。
保険業法とは、保険会社が守らなければならない基本的な法律のことです。

対して、共済は消費者生活協同組合や農業協同組合などによって規定され、組合によって異なります。
保険会社は営利目的で事業を行いますが、共済は非営利目的で、組合員のために事業を行っています。

監督官庁

保険会社の監督官庁は金融庁ですが、共済は組合によってことなります。
代表的な組合は厚生労働省管轄の「全国労働者共済生活協同組合連合会」や「消費生活協同組合」、農林水産省管轄の「農業協同組合」などがあります。

加入対象者

生命保険は原則として誰でも加入可能です。
共済の加入は、特定の地域に住む人や、特定の職業に就いている人など、一定の条件を満たす必要があり、基本的には組合員のみが加入できます。

セーフティネット

セーフティネットとは、安心や安全を提供する仕組みのことで、生命保険では「生命保険契約者保護機構」を指し、国内で事業を行うすべての保険会社が加入しています。
保険会社が破綻した場合、責任準備金の90%まで保障されるようになっています。

責任準備金とは、保険会社が保険金や解約金の支払いのために、積立てているお金のことです。
一方で、共済にはセーフティネットの仕組はありません。

参考:生命保険契約者保護機構|生命保険契約者保護機構の概要

取扱機関

生命保険は、各保険会社や代理店などから加入可能です。
共済は、各共済の窓口から加入します。
生命保険に比べ、共済の方が金融機関や大手スーパーなど取扱機関が多く、加入しやすいかもしれません。

主な用語の違い

主な用語の違いにていて解説します。

生命保険を基準とすると、「保険料」は「掛金」、「保険金」は「共済金」、「契約者」は「加入者」など名称の違いはありますが、基本的には同じ意味です。
配当金と割戻金も定義の違いはありますが、だいたい同じと思っていただいて構いません。

※配当金と割戻金については後半で解説します

生命保険と共済の商品比較

生命保険と共済を特徴で比較します。

  生命保険 共済
保険金額(共済金額)の上限 職業、年収、年齢による ※200~1,500万円程度
保険料(掛金) 年齢、性別、保険期間などによる 年齢、性別問わず一定
保障内容 保険期間中は基本一定 年齢に応じて変動

保険金額(共済金額)の上限

生命保険の方が、保険金額の上限は多いといえます。
職業や年齢・性別、年収や健康状態など、共済に比べて加入のハードルは高くなりますが、高額な保険金も設定可能です。

例えば、会社の代表者や役員などは、何億円という高額な保険に加入することもあります。一方で共済は、200~1,500万円程度の商品が多いかと思います。
高い保障が必要であれば、生命保険の方が有効です。

保険料(掛金)

生命保険商品の多くは、1歳毎に保険料が上昇するのが基本で、性別や年齢、健康状態や保険期間などに応じて保険料が変動します。
対して共済は、年齢や性別を問わず掛金は一定です。

保障内容

生命保険の保障内容は特殊な商品を除いて、保険期間中は一定です。
一方で、共済は60歳や65歳、80歳などの区切りで、保障内容が次第に小さくなる商品が多くなっています。

配当金(割戻金)

どちらも保険料や掛金に対して、戻ってくるお金のことを指しますが、下記のような違いがあります。

生命保険の配当金

生命保険の保険料は3つの予定利率をもとに計算されます。

  • 予定死亡率
    • 過去の統計から死亡者数を予測して、将来の保険金などの支払いに充当する必要額を算出するのに使われます
  • 予定利率
    • 保険料の算定に使われる指標で、割引率とも呼ばれます。
  • 予定事業比率
    • 事業費が収入保険料に占める割合のことです。

上記の予定と実際の差により、剰余金が出た場合、これを契約者に還元するのが配当金です。
※生命保険にはすべての商品に配当があるわけではなく、無配当の商品も多くあります。

参考:公益財団法人生命保険文化センター|配当金の仕組
参考:大和証券|金融・証券用語解説 [予定死亡率]
参考:大和証券|金融・証券用語解説 [予定利率]
参考:大和証券|金融・証券用語解説 [予定事業費率]

共済の割戻金

共済は配当金ではなく、割戻金といいます。
共済は非営利事業なので、剰余金が生じた場合、加入者に建言する仕組になっています。
割戻率は4~20%程度で、保険会社の配当金より高いといえます。

参考:全労災|割り戻し金一覧

設計の自由度

設計の自由度に関しては、生命保険に軍配があがります。
生命保険は、必要な保障をカスタマイズできる商品が多く存在します。
例えば、

  • 死後整理資金として終身保険200万円
  • こどもが成人するまでの定期保険2,000万円
  • 医療保障は入院のみで、がん保障は不要

などのように自由に組み合わせることが可能です。
対して、共済はパッケージ型の商品が多く、自由度は低いといえます。

生命保険のメリット・デメリット

共済と比較した場合のメリット・デメリットを下記に整理します。

生命保険のメリット

生命保険のメリットは以下の2つです。

  • 商品が多く、設計の自由度が高い
  • 公的なセーフティネットがある

商品が多く、設計の自由度が高い

メリットの1つ目は、商品が多く、設計の自由度が高いことです。
家族構成やライフステージの変化に応じて、必要な保障を選択して加入することができます。

公的なセーフティネットがある

メリットの2つ目は、公的なセーフティネットがあることです。
保険会社が万が一破綻しても、生命保険契約者保護機構によって、保険契約の継続措置が取られます。

責任準備金の削減や、予定利率の引き下げという可能性はありますが、契約は守られる仕組になっています。

生命保険のデメリット

生命保険のデメリットは以下の2つです。

  • 共済と比較すると保険料が割高
  • 保障内容がわかりづらく、自身で設計できない

共済と比較すると保険料が割高

デメリットの1つ目は、共済と比較すると保険料が割高なことです。
生命保険の場合、年齢や性別など様々な条件で保険料が変わりますが、共済の掛金は基本一定です。

保障内容がわかりづらく、自身で設計できない

デメリットの2つ目は、保障内容がわかりづらく、自身で設計できないことです。
多くのケースでは、担当者にヒアリングをしてもらって、保障プランを作成してもらうことになります。

共済の場合は、全員一律の掛金で、保障内容も基本は変わりません。

共済のメリット・デメリット

生命保険と比較した場合のメリット・デメリットを下記に整理します。

共済のメリット

共済のメリットは以下の2つです。

  • 掛金が一定でお手頃
  • 割戻金がある

掛金が一定でお手頃

メリットの1つ目は、掛金が一定でお手頃なことです。
どんなタイミングで加入しても基本掛金は一定です、また、生命保険と比べて、保障内容の割には掛金が安いといえます。

割戻金がある

メリットの2つ目は、割戻金があることです。
割戻金だけで、加入の良し悪しを判断できませんが、生命保険の配当金と比べると高い金額を期待でき、実質的な保険料の割引ともいえます。

共済のデメリット

共済のデメリットは以下の2つです。

  • 設計の自由度が低い
  • 年齢が上がるにつれて、保障が下がる商品が多い

設計の自由度が低い

デメリットの1つ目は、設計の自由度が低いことです。
共済は掛金や保障内容が一定で分かりやすいのですが、共済金額を増額したり、不要な保障を外したりすることはできない商品が多いです。

年齢が上がるにつれて、保障が下がる商品が多い

デメリットの2つ目は、年齢が上がるにつれて保障が下がる商品が多いことです。
共済は60歳や65歳で保障が下がり、80歳で保障が終了するという商品が多くあります。

本当に保障が必要な時期に、保障が不足してしまう可能性があります。

主な共済の種類

共済は様々な種類がありますが、よく聞く商品として全労災の「こくみん共済」、JA(農業協同組合)の「JA共済」、日本コープ生活協同組合連合会の「CO・OP共済」、全国生活協同組合連合会の「県民共済」などが挙げられます。

主な共済4種類について特徴をまとめます。

都道府県民共済

都道府県民共済は、死亡保障や医療保障を幅広くカバーするバランスの取れた保障が特徴です。

保険期間は3つの区分に分かれ、1,000~4,000円のコースが設定されています。健康状態の告知が必要ですが、民間の保険会社に比べる緩く、医師の診査は不要です。

参考:全国生協連|共済事業について

こくみん共済

全労災のこくみん共済は、都道府県民共済と同様に幅広くカバーする保障が特徴です。

1口1,000円以上の出資で、誰でも組合員になることができます。
共済は5種類あり、健康状態の告知は必要ですが、医師の診査は不要です。

参考:こくみん共済<全労済>|こくみん共済

JA共済

JAは農業従事者が互いに助け合うことを目的につくられた組織ですが、組合員でなくとも共済に加入することは可能です。

民間の保険会社に近く、一生涯を保障する終身共済や、こどもの教育資金に備えるこども共済などの商品があるのが特徴です。

参考:JA共済|ひとに関する保障

CO・OP共済

CO・OP共済も手頃な掛金で様々な保障を受けることが可能です。
1番の特徴は、個人賠償責任保険を特約で付加できることです。家族の誰か1名が共済に加入し、プラス140円で、個人賠償責任保険を付けることができ、最高3憶円までの保障を確保できます。

個人賠償でき人保険とは、日常生活における偶然な事故で、他人にケガをさせたり、物を壊したりしたことで、法律上の責任を負った場合を保障する保険です。

参考:CO•OP共済|加入をご検討の方
参考:CO•OP共済|個人賠償責任保険(臨時費用補償及び賠償事故解決特約)

結局どっちを選べばいいの?

結論、どちらを選べばいいかは、「人による」、「考え方による」ということになります。
自分合った商品を選ぶということです。

現役で働ける期間の最低限の保障でいいのか、一生涯の保障を確保したいのかなどです。夢や目標を含めた、自身のライフプランをよく考えて検討することが大事です。