新型コロナウイルスの感染拡大により、在宅勤務を強いられている人も多いと思います。
パーソル総合研究所が4月10〜12日に調査した結果によると、テレワーク実施率の全国平均は27.9%だったようです。緊急事態宣言が全国に拡大された16日移行はさらに増えている可能性があります。
今回は在宅勤務のメリット・デメリットを整理し、今後の働き方について考えてみたいと思います。
参考:株式会社パーソル総合研究所|緊急事態宣言(7都府県)後のテレワーク実施率
在宅勤務とは?
在宅勤務とよく混同される言葉としてテレワークが挙げられます。テレワークとは「tele=離れた場所」と「work=働く」を合わせた造語で、「ICTを活用した時間や場所にとらわれない柔軟な働き方」を意味します。
在宅勤務はテレワークの1つの形態で、その他に、カフェやホテルのラウンジでなどで働くモバイルワークや、シェアオフィスなどで働くサードオフィスプレイス勤務が含まれます。
在宅勤務よりもテレワークのほうが広い意味で使われます。新型コロナウイルスの感染拡大と政府の緊急事態宣言の発令により、現在はテレワークが一般化していますが、自宅で勤務せざるを得ないというのが本音かと思います。
在宅勤務のメリット
在宅勤務のメリットを以下にまとめます。
- 通勤がなくなる、勤務地に制限がない
- 業務効率や生産性があがる
- 仕事とプライベートを両立できる
それぞれについて考えてみます。
①通勤がなくなる、勤務地に制限がない
メリットの1つ目は、通勤がなくなることです。
これは在宅勤務の最大のメリットかもしれません。人によっては、自宅と勤務先の往復に数時間かかったり、満員電車の混雑など、通勤には以外に体力や時間を使います。
在宅勤務であれば、通勤時間がゼロになり、その分の時間を仕事やプライベートの時間にあてることができます。
②業務効率や生産性があがる
メリットの2つ目は、業務効率や生産性が向上することです。
基本的には1人で作業をするので、周りの環境を気にせず業務に集中できます。他のスタッフの会話が聞こえることもないので、自身にとって最適な環境を構築することができます。
③仕事とプライベートを両立できる
メリットの3つ目は、仕事とプライベートを両立できることです。
在宅勤務であれば、育児や介護中でも仕事がしやすいというメリットがあります。
また、家族と過ごす時間や自分の趣味などの時間も確保しやすくなり、仕事と生活のバランスを上手にとることで、ワークライフバランスの向上が期待できます。
在宅勤務のデメリット
在宅勤務のデメリットを以下にまとめます。
- 在宅勤務は息抜きやリフレッシュがしにくい(自己管理できる社員しか在宅勤務はできない)
- コミュニケーションが希薄になる、孤独を感じやすい
- 職種や業種によっては正当な評価が受けにくい
それぞれについて考えてみます。
①在宅勤務は息抜きやリフレッシュがしにくい(自己管理できる社員しか在宅勤務はできない)
デメリットの1つ目は、息抜きやリフレッシュがしにくいことです。
在宅勤務の場合、家族や同居者はいるかもしれませんが、基本は1人の空間で仕事を行います。上司への気遣いや、他のスタッフとの雑談などは発生しませんが、孤独を感じやすいといえます。
また、1人で業務が行えるメリットがある反面、長時間勤務になりがちだったり、仕事とプライベートを切り替えづらかったりします。他人から指示を受けることも減るので、自己管理ができない人にとっては逆に窮屈に感じるかもしれません。
②コミュニケーションが希薄になる、孤独を感じやすい
デメリットの2つ目は、コミュニケーションが希薄になることです。
職場で働くスタッフと比べて人とのコミュニケーション機会が減るので、疎外感を感じやすくなります。電話やメール、チャットやWeb会議など様々なツールは利用できますが、雑談があまり起こらない傾向にあるので、冷たい印象の業務連絡になりがちです。
また、デジタルツールを利用して聞くほどでもないちょっとした相談もしづらい環境といえます。
③職種や業種によっては正当な評価が受けにくい
デメリットの3つ目は、職種や業種によっては正当な評価を受けられない可能性があることです。
上司と同じ空間にいないので、勤務状況を直接見てもらうことができません。そのため、評価基準が成果物のみになりがちで、その家庭における努力や成長が見えにくいことになります。
特に今回のコロナ騒動で急遽在宅に移行した企業は、評価の基準が定まっていないところがほとんどだと思います。
現状は強制在宅勤務?
現在コロナ禍の影響で在宅勤務が一般的になっていますが、大多数の企業が仕方なく在宅勤務に移行したという状況ではないでしょうか。
企業がテレワークをためらう理由
コロナ騒動以前から、新しい働き方として注目されていたテレワークですが、日本ではあまり浸透しませんでした。
日本テレワーク協会が、20〜69歳を対象として2015年に行った調査によると、在宅勤務をしたいと回答した人の割合は59.1%にも上ったようです。
しかし、IT専門の調査会社であるIDC japanが行った2017年時点の国内テレワーク導入率調査では、従業員500人以上の大企業でも23.6%に止まっています。従業員500人未満の中小企業ではわずか4.7%という結果です。
関心が高い割には、普及しない理由について考えてみました。
労務管理や時間管理が難しい
1つ目は、労務管理の難しさが挙げられます。
テレワークはオフィスに出向く必要がないため、実際にどれくらい働いているのか、きちんと休日を取っているのかが把握しにくく、法で定められた時間を超えて残業をしているかもしれません。
そこは、テレワークのメリットとして自己管理が必要という部分かもしれませんが、マスメディアなどに揚げ足を取られる可能性があります。
また、時間だけでなく、仕事への取り組みが上司に見えません。他のスタッフや同僚もいないので、自宅でダラダラ過ごしても誰も気づきません。まじめに働かなくても給料をもらえると高をくくり、仕事をしない従業員が出る可能性があります。
ICT環境の整備
2つ目は、セキュリティの問題を含め、ICT環境を整備するのにそれなりのコストがかかることです。
自宅にいながらオフィスと同じように仕事をするためには、ネット環境を始めとする、セキュリティシステムを整える必要があります。
情報漏洩などが起こってしまった場合、企業は社会的信用を失いかねません。リスクを避ける意味でも、テレワークの導入には慎重にならざるを得ません。
また、正当な評価を下すための労務管理システムの見直しや、コミュニケーションツールの導入なども検討しなくてはなりません。資金的に余裕がないと導入しにくいのが現状です。
テレワークによりリストラが加速する?
テレワークの普及により、事実上のリストラが加速するかもしれません。
コロナウイルスの影響で急遽テレワークを導入したところでも、収束後も活用していきたいと考えている企業が多いようです。
例えば、テレワークによるミーティングは時間が短くなり効率的だという意見があります。その反面、複数人によるWeb会議では、雑談も少ないため、実質的な参加者はかなり少なくなります。
普段は存在感のみで仕事をしていた上司もテレワークでは仕事がない状況に陥る可能性があります。貢献度の低い社員から退職勧奨が行われるかもしれません。
現在はテレワークによって、「会社のオフィスが不要になる」など新しい働き方が騒がれていますが、正直、「少しテレワークに酔いすぎでは?」と思っています。コロナ騒動が落ち着けば、通常に戻ると考えています。
ただ、すべてが元に戻るわけではなく、テレワークのよかったところを残しつつ、少しづつ世の中が変わっていくと思います。
新しい価値観が生まれているのは事実です。
変わらなければ生き残れない時代が企業にも個人にも迫っているのかもしれません。